バタフライ効果という言葉があります。「非常に小さな出来事が、最終的に予想もしていなかったような大きな出来事につながる」ことを意味する言葉です。私たちの生活に起こる様々な出来事がひょっとすると地球の裏側で起こった蝶のはばたきが原因なのかも知れませんよ!と言われたらどうでしょうか。我々現代人は、この荒唐無稽な言葉を一笑に付すことでしょう。
今年は教師生活8回目の図工展でした。子どもたちの絵を観てこんなに心がときめくのは何故でしょう。自分らしさを大切にしている彼らが今そこに輝いているからなのです。絵の輝きは偶然の産物だと思います。緻密な計画をするとどんどん絵に力がなくなっていきます。計算を踏みはずした時にこそ満足いく笑顔が見られるのです。これを表して土門拳氏は「いい写真というものは、写したのではなくて、写ったのである」と言っています。今年もまた子どもたちから素敵なインスピレーションをもらえるといいな!ちょっと贅沢な望みでしょうか?
これは私が今年の賀状に認めた言葉です。すると返信で素敵なことばをいただいて感激したのです。花の盛りを過ぎ、花托も色を失った真冬の蓮池に極彩色の翡翠が舞い来たる。新春に福来るように寒さに耐えながらも まばゆい美しさが初春の喜びを伝えてくれているように思われました。
絵を通して子どもたちからもらったことばが核となり、私の心を揺り動かします。そこから次の人へその波紋が広がっていく。まるで水面に投げ入れられた一粒の砂粒から始まる波紋を見ているようで心温まる思いがしました。今だったらこのバタフライ効果も信じることができるかも知れません。それはなぜでしょう? 僕らは奇跡でできているという確信が持てたからです。
絵・文 田中 基信