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説教要約2024/6/30「傷つくところからしか愛は始まらない」

「傷つくところからしか愛は始まらない」

イザヤ書30:18~26

ルカ福音書23:44~49

 

 私がまだ神学生だった37年前に、ゴスペルシンガーの岩渕まことさんと知リ合いました。当時、岩渕さんは小学生だった8歳の娘さんを1年間の闘病生活の末に天国に見送ることになりました。そして、岩渕さんはそのような辛く悲しい経験をする中でいくつかの歌を生み出していきました。

 

 岩渕さんが自分の経験から気付いたことは、神が罪人である人間を深く愛してくださっているということでした。そして、愛することは傷つくことであり、それがはっきりと表れているのが、イエス・キリストの十字架の光景であるとの考えに至ります。さらに、「傷つくことからしか愛は始まらない」との確信からから、彼は「父の涙」というゴスペルの名曲を生み出しました。

 

 イエス・キリストは、朝の9時に十字架につけられて午後3時に息を引き取られました。その途中の昼の12時に、全地は暗闇になったことが聖書に記されています。この暗闇こそが神が罪を裁く始まりでした。神の御子イエス・キリストは、この時にすべての人の罪を背負い、私たち一人ひとりの身代わりとなって十字架の上で裁かれていったのです。

 十字架の上で苦しむ御子イエスを見つめる父なる神の苦しみは、とても大きなものであったことでしょう。その時の状況を聖書は、「太陽は光を失っていた」と記していますが、それ程までに神の悲しみが大きかったことを表しているようにも思えます。

 

 岩渕さんは、愛する娘さんを天に送られた試練を通して、今まで分からなかった父なる神の罪人に対する苦しみと愛とを深く感じることができました。私たちも試練を通らされる時に、独り子の死を見つめるしかなかった神の愛に気づかせていただきましょう。私たちは自分自身の試練の中でこそ、神とその愛に出会うということが出来るのです。これからの人生も、自分に注がれている神の眼差しを感じることによって、慰められながら、励まされながら歩んで行きましょう。

牧師 : 宮本幸男

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